河之内 祥人(第22期修了者)
羽石 大逸(第25期修了者)

今回はテイエムオペラオーをはじめ数々の重賞勝ち馬を輩出している北海道沙流郡日高町にある賀張共同育成センターを訪ねました。ここで働いているBTC研修第22期修了の河之内 祥人さんと、第25期修了の羽石 大逸さんにお話を伺い、この仕事に従事するようになったきっかけや、今後この世界に飛び込もうとしている若い人たちに向けてのアドバイスをお話していただきました。

きっかけはゲームから

「ゲームセンターの競馬ゲームがきっかけなんですよ」と羽石さんは馬の世界に飛び込んだきっかけを話してくれました。「それがきっかけとなって競馬に興味をもちはじめ、叔父さんに競馬場に連れてってもらい、馬の走る姿やジョッキーの姿を見て競馬が好きになりました」。その後、競馬を観るにつれて、徐々に馬に乗ってみたいと思うようになり、乗馬を始めたということです。「馬に乗りはじめてから馬の仕事に就きたいなと思うようになりました」。

一方の河之内さんも照れながら「自分も恥ずかしながら競馬のテレビゲームで競馬に興味を持ちました」と、きっかけは羽石さんとほぼ同じであること、「それから競馬好きの友人と一緒に阪神競馬場に行き、ジャングルポケットの返し馬を見てから、ファンではなく関係者としてこういう世界で働いてみたいなと思いましたね」と、馬の走る姿を生で観て、この世界に飛び込もうと思ったようです。

二人とも「きっかけはゲームからと不純に思われますが、僕たちにとってはきっかけを与えてくれたものなので感謝していますよ」と羽石さんは笑いながら話してくれました。

その後、本格的にこの仕事をしようと色々な所から情報を集め、羽石さん、河之内さんともインターネットでこの研修を知り、入講したいと思ったそうです。河之内さんは平成16年の第22期、羽石さんは平成19年の第25期にBTCの研修生として入講されました。

羽石さんは「研修は最高の環境でしたね。幸せな気持ちでした」と研修の楽しかった思い出を話していただきましたが、河之内さんは、対照的に「研修は食らいつくので精一杯でした」と当時必死だった自分の気持ちを述べられました。「実際に研修に入ってみて、競馬場の華やかさとは真逆で戸惑いましたね。ただ研修では本当にいい経験をさせていただきました」と、研修が今現在のベースになっていることを話してくれました。

牧場に勤めて

お二人とも、就労当初は研修とのギャップに相当苦戦したらしいです。「あの頃はただ乗っているだけだったと痛感させられましたね」と河之内さん。「当たり前な話ですが、馬の騎乗ひとつにしても、研修生のときよりも求められることが本当に多いです。それに応えられない自分がいました。まだまだですが最近やっと駈足の手前など乗り手の意志通りに動かせることができるようになりました。

就労中の牧場について訪ねたところ、「この牧場は本当にいい雰囲気ですよ。働きやすいですし。この牧場、過去に辞めた人が結構遊びに来るんです(笑)。ここに関係した人たちは辞めてもつながっていますね。こういう点をみていると、人のつながりって大切だと感じています」。

  

今後の目標

今後の目標について羽石さんおよび河之内さんに尋ねたところ、羽石さんは「今、とてもいい経験をさせていただいていますので、当面はまだここでお世話になろうと思っています。今、経験させていただいていることに感謝していますから。ここは担当馬制なので、当面の目標は、自分が携わった馬から重賞勝ち馬を出したいです。そう言いながらも、ただ普通に1勝するだけでもうれしいですけどね(笑)」。一方の河之内さんは「いまは色々と経験させていただけるので本当に勉強になっています。ここにきて初めて乗った馬が新馬勝ちしたことがうれしかったです。以前働いていた他の牧場で自分が乗っていた馬が新馬勝ちしたことはありましたが、ここでは担当制のため喜びも一段と強かったのです。僕は経験もまだまだないので日々勉強です。先のことは考えられないですけれど、強い馬を一頭でも多くつくりたいと思っています。それが当面の目標です」と力強くお話されました。

  

これから馬の世界に入ってくる人へ

お二人にこれからこの世界でやっていこうと思っている方や、現役の研修生へのアドバイスについて尋ねたところ、羽石さんは「何事にもやる気がなければだめですね。もしそれがなければやめたほうがいいと思いますよ。本当にやっていくという気持ち、何でもそうだと思いますが、そういうものがなければ続かないですよ。この仕事は特に経験が必要ですからね。」

河之内さんは「馬が好きであり続ける気持ちですね。いい思いばかりではなく、しんどい、つらい、寒い、正直マイナスな要素ばかりだと思います。その反面つらい思いをしているからこそ、馬が勝ったときの喜びは大きくなります。」

そして自分達の経験からということで「遊べるときは遊んだほうがいいですね。引きこもることは良くないですよ。僕はインターネットで馬券を買えますが、わざわざウインズまで行きますから(笑)。出かけると気分転換になりますよ。仕事と遊びのメリハリは本当に大切ですね」。そして、「宴会芸は一つ持っていたほうがいいです(笑)。芸は身を助ける、これは本当ですよ。こういったことできるようになっていると、人前で緊張しなくなりますし、相手に喜んでもらうためにどういったことをすれば良いか考えるようになりますし。それが結果的に仕事の考え方にもつながっていきますから。ただウケは良くないですけれど…」と仕事以外のことのアドバイスをいただきました。

   

今回、取材させていただき、研修の先輩は河之内さんですが、職場での先輩は羽石さんとお互いの立場を尊重して良い関係を築きながら働いていらっしゃることがよくわかりました。終始笑顔で取材に答えていただき、今お二人が充実した日々を送ってらっしゃることを嬉しく思いました。また「こんな話で大丈夫ですか?」と取材者のことまで心配していただきました。

お二人とも今まで以上に飛躍されることを願っております。頑張って下さい。

(平成23年10月取材K.S.)