はじめに

BTCにおいて育成調教技術者養成研修が開始されて今年で16年目になります。既に研修を終えた皆さん方が就職し、その後どの様に活躍されているのかこれまであまり紹介する機会がありませんでした。そこで、研修生の就労先を訪ね、現在どのような仕事をしているのか、また将来の抱負などについてうかがって取材してきましたのでその一端を紹介します。

今回は、わが国の競馬界で躍進を続けている社台ファームに就職しているBTC研修修了者の中から山本哲哉さん(平成8年修了)、町田浩一さん(同平成10年)および朝日清隆さん(同平成19年)の3名の方に多忙なところ貴重な時間を割いて質問させていただきました。

札幌ではライラックが開花し、その祭りが始まったばかりですが、広大な放牧地や調教施設の備わった社台ファームは五月晴れの下で場内の木々や牧草地は新緑を迎え、前日の激しい風雨を感じさせず大変爽快でした。取材した3名全員が育成部門に従事しており、衛生管理や立地などの関係から分業化されており、繁殖部門には全くタッチしていないということでした。


左から 町田さん  山本さん  朝日さん





各人の現状とこれからの抱負など
 最初に取材した山本さんはBTCでの研修を終えて社台ファームに就職して丸12年を過ぎており、現在は厩舎長を務めて2年目となり、調教を行う2歳および休養馬48頭と1歳馬12頭の計60頭の管理を任されているとのことでした。

日常、自ら騎乗調教を行っており、訪問した日も1,000mのダート馬場で目の前を疾走していきました。厩舎長となれば、担当厩舎の馬の飼養衛生管理から従業員の人的管理など幅広い知識と経験が求められます。運動強度や設置された馬場と馬との適性など、馬体の細かな変化や異状について絶えずよく把握していることが必要ということがよく分かります。



社台ファームの坂路調教での調教
 (左から2番目が朝日さん その後ろ3番目が山本さん)
 

 就職してこれまでで一番うれしかったことや逆に辛かったことを質問したところ、未勝利であった担当馬を試行錯誤のすえに勝ち鞍をあげさせることができて感激したとのことでした。

目標としては、育成した馬を全頭レースにデビューさせることであり、未勝利馬をなくせればと考えているようです。ダイワメジャーの育成、休養時も調教を担当しており、GI馬に騎乗できるのがうれしいが苦労したということでした。プライベートでは既に結婚されており、3歳と5歳のお子さんに恵まれ、とても充実した家庭生活を送られている様子が良くうかがえました。

 町田さんは、研修を終えて勤め始めて丁度10年経過し、現在は山本厩舎長の下で1歳馬の育成部門に所属し主に中間育成に携わっているとのことでした。就労して比較的間もなく1歳のときのネオユニバースを担当し、この馬は走るだろうと感じていたところ、その翌々年には皐月賞およびダービーに優勝し、馬がGIを2勝の大活躍してくれたことがとてもうれしかったとのことでした。

逆に、騎乗していて自分の失敗から担当馬にケガをさせてしまったことが過去にあり、関係者や能力を発揮できなかった馬に申し訳が無く、本当に辛かったことということでした。とにかく育成馬が故障すると運動させることもできなくなります。
きめ細かく安全面で配慮しており、馬への愛情の深さが強くうかがわれました。本人はまだ独身のため、休日の夏にはゴルフ、冬季にはスノーボードを趣味として青春をおう歌している様子がよく分かりました。

 最後にお話しをうかがった朝日さんは昨年研修を終えて直ぐ就職し、この4月でちょうど1年になりました。就労当初からしばらくは牧場内のあらゆる部門を経験し、半年ほど前から調教に騎乗を始めたため、現在はまだ担当している馬がレースに出走するまで成長していません。これからデビューするのが楽しみだそうですが、とにかく、自分の所属している厩舎の馬がレースに出走し、勝てれば厩舎も盛り上がり非常にうれしいとのことでした。

現在の目標は、自分自身が早く一人前になって、厩舎長になることだということです。山本さんからも早く代わって仕事してもらえるくらいに成長して欲しいとエールをもらっています。

 同期の研修生へのメッセージとしては、一緒に競馬を盛り上げるようにしていこうという積極的姿勢に好感が持てました。プライベートな楽しみは、美味しいものを食べたり馬券を買うことであり、予想通りに馬券が当れば最高ですとのことでした。就職してその年の秋には結婚され、早く一人前の育成調教技術指導ができる者になって活躍されることを心からお祈りしています。



未来に向けて
 今回、取材させていただいた3名ともに毎日明るく前向きに仕事をこなしている様子がよく分かり、オーナーの意向をよく理解し、わが国の競馬産業の一翼を担っているという自負が感じられました。研修終了生の皆さんの益々の活躍を期待しています。

(2008年5月取材)